今も昔も『大志学園』のモットーは『生徒の「わからない」を解決してあげる』です。
しかし、これだけでは、もう1ステップ上の生徒の潜在的なニーズに応えることはできません。
そのために、『自分で「わからない」を解決する力をつけてあげる』ための指導の必要性が、2年目の『大志学園』に突き付けられました。
当時の私は日々、この1ステップ上のニーズに応えるがためのヒントを探していました。
そんな時、偶然出逢ったのが、前回のブログで書きました国語学者の大野晋(おおのすすむ)先生著の『日本語練習帳』(岩波新書)という本でした。
『日本語練習帳』に書かれていたこと
この本の概要は、文の組み立て、文章の展開など日本語の骨格を理解し技能をみがくための日本語のトレーニング法を記した本でした。
日本語を、正しく早く読む力を身に付ければ、国語の力がつくのはもとより、すべての教科の教科書や参考書は日本語で書かれているので、それらを読むことができるようになる(=日本語での理解力が上がる)ので、自学自習ができるようになるはずだ、と考えました。
この『日本語練習帳』の骨子は
- 単語に敏感になる
- 文法は役に立つのか
- 文章を読むにあたっての2つの心得(「のである」「のだ」を消す。「が、」を使わない)
- 文章の骨格を掴む
- 敬語の基本的な使い方を覚える
というものです。
この中で、私が注目したのは①と④でした。
国語力をつけるトレーニング、スタート!
②、③そして⑤は高校生の国語力アップには、少し荷が重い内容と考えましたので、「単語に敏感になる」ことと「文章の骨格をつかむ」ことに焦点を絞って、生徒たちへの指導を具体化させました。
具体的に、生徒に課した練習メニューは新聞の社説を縮約するという作業です。
縮約とは、要約することや要点をとることではなく(掻い摘んで表現するのではない)、文章全体を縮尺して、まとめることです。
約1200字から1400字程度の文章を、400字の文章にまとめる作業です。
この作業をするには、1つ1つの単語の意味や使い方に敏感にならざるをえません。
高校生レベルでは、日本語の語彙が不足しているケースが往々にして見られます。
また、現代文で出題されるような文章は、言い換えや例示が、頻繁に用いられています。
つまり、名詞や動詞、形容詞などの正しい意味を知っていくことは不可欠ですが、同義語や反意語、接続語と接続詞の相関関係などを把握したりすることも重要です。
つまり、縮約とはできる限り重複した内容をまとめ、短く簡潔な表現にまとめる作業です。
このトレーニング(作業?)を数名のやる気満々の高校2年生の生徒数名に提供してみました。
トレーニングの手順はいたってシンプルなものでした。
- 毎週1回、縮約のための題材を提供する。
- 生徒は、1週間以内にその題材の文章を縮約したものを、私に提出する。
- 私は、それに目を通す。
- それについて、生徒と一人30分程度、内容の是非を指摘したり、単語について質問するというような口頭試問のような時間を設ける。
というような感じでした。
手順は、シンプルなものでしたが、
私は、縮約のための題材になる文章を探すのが大変でした。
毎日のように複数紙の新聞の社説に目を通し、高校2年生の学生が興味を持ちそうであったり、後に必要になりそうな内容の文を探すのが当時の日課でした。
生徒たちは、縮約そのものは、最初は戸惑っていましたが、回数を重ねるうちに、上手になっていきましたが、その過程において単語の意味を調べたり、使い方を考えたりするのが、非常に大変だったようです。
トレーニングの結果
しかし、苦労の甲斐あって、これに参加した生徒たちの国語力は急速についていきました。
さらに、同時に英語力もめきめき上がっていきました。
結局、ねらい通り、日本語を読むのが速く正確になったので、勉強の質が上がったのです。
ちなみに、彼らは1年数か月後、揃って難関大学に合格することになりました。
大野先生、ほんとうにありがとうございました。
(つづく)
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